さんぽ道

★☆ 情報公開個人識別情報について ☆★

2014.8.20

 個人識別情報には,①個人の氏名,生年月日,住所,電話番号などのようにそれ自体で特定の個人を識別できるものと、②当該情報それ自体では特定の個人を識別できなくても,既に公になっていたり,社会一般人が入手可能な他の情報と組み合わせることで,間接的に特定個人を識別できるものとがあり,自治体の情報公開条例は,①,②ともに個人識別情報として不開示としている。②の他の情報との照合によって特定個人を識別する方法を「モザイク・アプローチ」という。このモザイク・アプローチで問題となる点が,「他の情報」の範囲として,一般人が通常入手し得る情報に,特定範疇の者(当該個人近親者や地域住民等)であれば保有している,又は入手可能であると通常考えられる情報も含むか否かである。

 この点に関して,徳島市と鳴門市では見解が異なっている。厚生労働省が義務付けている「社会福祉施設の事故報告書」の情報公開請求に対する公開・非公開の決定に際して,事故報告書には,事業所名等,事故対象者,事故の概要,事故発生時の対応,事故後の対応などの情報が記載されているが,個人識別情報については,徳島市,鳴門市ともに非公開としたが,個人識別情報ではない施設名については,徳島市は公開,鳴門市は非公開とした。鳴門市情報公開担当職員によると、施設名の非公開の決定に際し,同種の案件で,施設名を公開することにより,事故者の家族や他の入所者は,自分らが入手できる情報と組み合わせることにより,特定の個人を識別することができるとして非公開とした大阪府の答申例を参考にして,非公開決定の判断をしたとしている。「他の情報」に当該特定範疇の者も含めるかどうかについて,徳島県の情報公開担当職員の見解は,県はモザイク・アプローチをとる場合,機械的な判断はせず,当該情報の性質や内容等に応じて,個別具体的に判断しているとのことである。

 モザイク・アプローチをとる場合,照合の対象となる「他の情報」の範囲について,あまり広げ過ぎると公文書公開請求権が機能し得なくなることがある。他方では,プライバシーは何人との関係でも保護される必要があるところ、当該個人近親者や地域住民等も開示請求をすることが可能であるため,当該特定範疇の者との関係でも保護される必要もある。とりわけ,個人識別性の判断に際しては,個人情報保護法との関係も考慮して慎重な判断をしなければならないと考える。事故報告書の施設名の公開・非公開の決定に際しても,機械的な判断をせず,対象となる施設の規模等も考慮して,公文書請求権が機能し得なくならないよう,施設ごとに慎重に判断することが重要であると考える。徳島市の決定と鳴門市の決定,どちらの決定が妥当であるかどうかは言い難いが,事故報告書は,厚生労働省が作成を義務付けた全国一律の文書であるから,公開・非公開の決定も同一にすべきではなかろうか。